+ 冷たい風が頬の上を滑っていく。 ご主人は声に出して言わないけど、この季節も嫌いみたい。 夏は夏で、手に負えない暑さにイライラしていて。 僕はとっても心配になる。 あまり心配して傍へいくと、「暑い、くるな」と目で追い払われる。 だから僕も夏は嫌いだ。 寒ければ寒いだけいい。 いつもと同じように、「嫌な季節だな」と言いながら。僕を撫でる。 布団にもぐりこんでも僕の好きなようにさせる。 そんな季節。 雑誌を読むご主人を横目に。お気に入りの玩具をかじる。 だれも見ていないテレビの音が少し耳障り。構ってくれないのも気に入らなくて、僕はご主人の足元にじゃれ付いた。 ご主人は気乗りしない様子。僕はさらにふてくされ、ぷいっとそっぽを向いた。 「(外に出たいなぁ)」 冬独特の水色の空が、窓の外には広がっていて。小さい子供たちのにぎやかしい声も、僕を誘っているよう。 ご主人はわかっていて僕に構ってくれない。うん、僕もわかってる。外に出ればきっとご主人はもっとしかめっつらになる。 ぷいっと。僕は気付いてない振りをする。 気持ちは頑張っているのに、こんなとき僕の尻尾はたれて、耳もぺたっとしているのだろうなぁ。 ごまかそうとして、僕はもう興味のない玩具にかぶりついた。 「ぺふぅ」 なんだかとっても情けない音。ご主人と僕の間になんともいえない空気が流れた。 ご主人はきっと横目でみているのだろう。今僕が顔をうかがおうとすれば僕の負けなんだ。 少し、時間を置いてご主人を・・・。そう思って意識を自分の首にむけるのだけれど、それより先に耳がご主人の遠ざかる足音を捕らえた。 下がる尻尾。 僕はそのまま頬を玩具に押しつける。 ご主人の足音が近づいてきた。 「(知らないよ僕は。僕は、邪魔を・・・。)」 目をむけず床に視線を落としていた。 チャリッと金属がこすれる音。耳が無意識にその音をおう。僕は負けていた。 いつのまにか不機嫌な顔に、反して僕は体が跳ねている様で。 頭を掻く手の暖かさが嬉しくてついには顔を向けてしまう。 ご主人は自分が思っているよりも優しい人。だから僕は邪魔をしたくないんだよ。 そう思って僕は平気な顔で玩具に戯れる。 繋がれるリード。 「買い物に行くぞ」と、低い、優しいトーンの声がする。差し出される手に僕はしぶしぶその手を握り返した。 こっそり見上げればいつもの穏やかな無表情がある。 僕は今日も負けたんだね。 何もかも筒抜けな僕が憎くて、でもそんな日常が僕は大好きで。幸せだなんてどう伝えればいいのだろう。 ――早く春が来ないかな。 そうすれば、困らせることも無くこの手を繋いでいられるよね。 |
***あーだこーだ***
ツンデレ×2ということで・・・ことで・・・。
なんかわやわやしてるよね、サーセン。でもわんこっていったらこんなんだよね(苦笑)
先生が一言しか喋らないのは、これはこれでベタっていうね。
一言で破壊力が・・・ねぇか・・・(´・ω・)